インテリアコーディネートから、導かれた答えは『ペールブルー』
Special interview FRECIOUS dewo page01

安積 伸Shin Azumiwith窪川 勝哉Katsuya Kubokawa

インテリアコーディネートから、
導かれた答えは『ペールブルー』

安積伸×窪川勝哉【対談後編】ウォーターサーバー[フレシャス・デュオ・ペールブルー]

インテリアと家電、両方を発想の基点とした新世代のウォーターサーバーFrecious dewo(フレシャス・デュオ)の発表から半年余り。既に大好評を博し、一時はお客様からのご注文に追いつかない事態になりました。どんなインテリアにも合うようプロの視点からチョイスされたカラーバリエーションに、この夏いよいよ新色が登場。デュオのデザインを担当された、ロンドン在住の著名なプロダクトデザイナー 安積伸さんと、今回の新色をプロデュースし、ファッション各誌でご活躍のインテリアスタイリスト 窪川勝哉さんの対談にて、デュオ新色への思いやデザイナーの裏話などをお二人にプロの目で存分に語っていただきました。


デザインとは、最適化の作業

――ウォーターサーバーは面積も体積もあって、ちょっとした大型家電だと思うのですが、安積さんは家電にデザインは必要であるとのお考えですね。

安積:デザインという言葉が華飾を与えることだと思うのは、デザインの解釈としては正しくないんです。デザインとはコントロール、最適化の作業です。生活しやすいようにコントロールする。生活というのは放っておくと、色々な要素を盛り込むばかりで、何が一番大事かがわからなくなってくるんですね。その器物に求められる一番重要な要素を見極めて、そこに他の要素を使い勝手良く、いろいろな強弱大小をつけて交通整理をし、結果的に生活の中で使いやすいものになるのがデザインというものです。しっちゃかめっちゃかだったものを「なぜ今までそうじゃなかったのか」と思うくらいに交通整理するのが僕の役割かな、と思っています。

――機能をオーガナイズするという感じでしょうか。

安積:僕はデザインには2層あると考えています。このサーバーで言うと、遠目で見るとただの柱なんですけれど、近くに寄ると操作部の密度感が見えてくる。椅子なんかもそうで、遠くから見て美しく環境に馴染んでいる部分と、身体に触れてみて感じる気持ちの良さと、2つのレイヤーがあります。どちらもなければならないし、どちらが欠けてもだめ。僕はかつて日本の電機メーカーでデザイナーをしていた経験と、海外でのキャリアで家具をいくつもデザインし発表している経験がありますから、そういう意味で両方を合わせてうまいバランスをとれて良かったと思います。

Frecious dewo(フレシャス・デュオ)

Frecious dewo(フレシャス・デュオ)

――そこに今回、色を与えるという作業が窪川さんのお仕事だったわけですね。

窪川:それ、なかなか難儀なんですけどね! これだけ完成されたデザインに自分が何かするなんて、僕がそんなことしていいのかな、ってドキドキしましたよ(笑)。

安積:デザインというのは、一度世に出たらデザイナーの自分の手から離れると思っているんです。特にプロダクトデザインは、使う人のものになり、世の中のものになる。ウォーターサーバーだったら、ご家庭でお子さんが好きなシールをぺたぺた貼っていたりするのも、それはそれでよしとするべきであって。僕が作ったのはあくまでもニュートラルな土台なので、利用者や違うひとがカスタマイズしてどう違う表情を与え発展させていくかというのは、僕の中では「他者による自分のデザインの解釈」として、興味深い試みなんです。例えば僕の実家などに名作椅子がたくさんあるんですけれど、僕もすごくカスタマイズしていますよ(笑)。

窪川:ええ! そうなんですか!?

安積:バンバン足切っていますし(笑)。名作椅子だってそんな座り心地のいいものばかりじゃないですから、自分なりに座り心地を追及するわけですよ。だから、デザインは一度世に出たら使う人のものなので、好きに使ってもらって本当はいいはずなんです。それによって使う人が充足感をもって使えるのであればそれが一番いいと思うし。でも発信する側、メーカーとしてはコントロールする必要もありますから、窪川さんやフレシャスの開発の皆さん、これだけプロの方にきちんと対応していただけているのはいい試みだと思うんです。

Frecious dewo(フレシャス・デュオ)

窪川:僕のところにも、ようやく最近dewoが来たんですよ。在庫がなくって。

――在庫切れになるほどの大人気で、実はフレシャスの社員でさえ誰もしばらく手に入らなかったそうですよ。

窪川:デュオは使えば使うほど、気づかない所でいろいろな発見があります。すごくシンプルなデザインなんですけれども細部までよく考えられていて、例えば溝があることで、確実にどこから水が出てくるか電気をつけない暗い中でもわかるし、ノズルが2つある必要はない(デュオは温冷兼用のシングルノズル)というのも発見でしたね。

安積:よく分かっていらっしゃいますね。あれには一家言あるんですよ、私としては(笑)。

窪川:シンプルでありつつ、とても完成されたデザインなんですよ。使っていて分かるものがたくさんありました。キッチンって家電の密集地帯なので、空間を眺め渡したときに家電一つ一つがインパクトあるデザインで、主張が強いと大変なことになりますよね。

安積:シンプルにしすぎて使い勝手が悪いのも嫌なんです。僕の中ではこだわりがあって。「安積さんのデザインはシンプルですから」とよく言われるんですけれども、「いや、シンプルに見せているだけで結構複雑なことやっているんですよ」といつも答えるんです。複雑なことをシンプルに整理して見せているだけというわけで。


デュオを使うと感じる発見とは

窪川:僕、新規でサーバーを作る時に安積さんにデザインを依頼してはと提案させていただいて。ずっと以前から、一ファンとして一方的にプロダクトを見ていたので。

安積:なんだかんだ私はこの世界でも長くなっちゃいましたね(笑)。

窪川:先日も雑誌の撮影で伺ったあるCEOのお宅で、安積さんのラパルマのベンチが使われていましたよ。フェラーリの隣に(笑)。安積さんのデザインって、たぶん一般的な人には一見押しが強いデザインな訳ではないので、何かでグッと引き寄せられるとか強い印象が残るというものではない。でも一度触れると虜になってしまうんですよね。使われる状況をすごく考えたデザインだと思うし、デザインってシンプルにするのはすごく難しい作業。でもdewoは、使うほど全ての操作性に気づきがあります。ノズルの下にグラスを置いたまま水を注げるとか、水受けを外すとフラットになるので僕のコーヒーメーカーの水タンクがぴったり立てられる。前のサーバーと比べるとストレスだったことから全て解放されたんですよ。

安積:フレシャスさんの技術力が可能にした部分もあります。そういうことを意識して開発していただけたので。皆さんに僕のアイデアをちゃんと聞いていただけて、いいコラボレーションができたなと。窪川さんの色に関しても、きれいな色を出していただけて、満足です。

窪川:安積さんにそう言っていただけて、よかったです!

Frecious dewo(フレシャス・デュオ)

安積伸(あづみしん)
1965年兵庫県生まれ。ロンドンを拠点に、国際的に活躍するプロダクト・デザイナー。NECデザインセンター勤務を経て、92年に渡英。英国王立美術大学修士課程を修了後、95年にデザインユニット「AZUMI」として活動の後、05年に「a studio」を設立。ティファール社やマジス社、ラパルマ社など多くの国際的企業でプロダクトデザインに携わる。FX国際インテリアデザイン賞2000「プロダクトオブザイヤー」をはじめ、グッドデザイン賞、100%ブループリントデザイン賞など国内外で数多くの賞を受賞。また、審査員としてもIF賞(独)などに参加。「LEM」スツールがビクトリア&アルバート美術館(英)のパーマネントコレクションに選ばれるなど、各地の美術館に作品が収蔵されている。最近の仕事では、ブルーボトルコーヒーのテーブルウェアなどのデザインも手がけている。

窪川勝哉(くぼかわかつや)
インテリアのみならずクラフトから家電、クルマまでプロダクト全般に造詣が深いインテリアスタイリスト。『エルデコ』、『レオン』などの雑誌やTV、その他メディアでのスタイリングに加え、ウインドウディスプレイやイベントのデコレーションなども手掛ける。またメーカーとのコラボレーションによる家電プロデュースも行っている。