2014年に発売された「dewo」は、デザイナー 安積伸とともにゼロから企画・設計したFRECIOUSを代表するモデルです。10年以上、長きに渡って愛され続けてきたロングセラー商品を常温水やUV-LEDなどの便利な機能を追加し、カラーやロゴも時代に合わせてアップデート。2026年3月25日に「dewo ii」としてより魅力的なプロダクトに生まれ変わりました。シンプリシティを磨き、新機能を搭載し便利になった「dewo ii」のデザインについて、プロダクトデザイナー・安積伸さんに想いを伺いました。

生活の中に浸透し、
空間や家族の輪の一部になる
ウォーターサーバーを目指して。

── 長く愛され続けてきた「dewo」を刷新するにあたり、改めて大切にしたデザインする上での心がけについてお話を聞かせてください。

安積:プロダクトデザイナーという立場として、ショートサイクルで「モノを消費する」ということに抵抗感があります。私は家具や生活機器、テーブルウェアをデザインする機会が多いのですが、そういったものは良いデザインならば、孫の代まで受け継がれることもあるかもしれないですよね。あえて言葉にするならば「何世代に渡って、受け継がれるものの価値」を意識しました。電気製品は、使用期間が長くなるとどうしても機構や回路に経年劣化が発生しますし、技術も日々進化するので、家具やテーブルウェアなどのベーシックなプロダクトに比べると、命は短いものになりがちです。モノとして、そうした宿命はあるということは理解しつつも、自分が作るものは生活の中に浸透し、空間や家族の輪の一部になるようなものを目指したい。人は本当に好きになったものは故障しても、修理してでも使いたくなりますよね? 数年後に製品のバージョンアップがあったとしても、同じ機種、後継機を使いたいと思ってもらえるようなモノを作りたい。そんなことを心に携え、デザインに取り組みました。

── 長く愛されるためのデザインとして、必要なエレメンツはどういうものだとお考えですか?

安積:ひとつは、機能性がしっかりしていること。そして、もうひとつは、生活環境にうまくフィットすること。モノがあることで生活空間のグレードが上がる「佇まい」も重要です。モノを見たり、触れたりする瞬間に、生活に楽しさを添えるイメージができるようなものを提供することを常々、考えています。

“環境に馴染む色”を
念頭に置いて選んだ
「スミクロ」と「キナリ」。

── 生活に楽しさを添えるような「佇まい」。それはウォーターサーバーの色選びにも深く結びついているように思います。「dewo ii」の色は、どういった観点で選ばれましたか?

安積:色には流行があり、鮮やかに時代のムードが反映されるものだと思っています。今は安心感や快適性、優しさやゆとりみたいなものが求められるような気がしています。なので、“環境に馴染む色”を念頭に置いて選びました。「dewo ii」には「スミクロ」と「キナリ」が2色あります。我々の生活環境を見ていても「完全な黒」や「完全な白」というのはなかなかありません。そうしたことを踏まえて「墨黒」「薄墨」のような柔らかい印象の黒にしたいと思いました。それで、自然の中に存在するグレートーンの石からインスピレーションをもらいました。優しさとある種の高級感を同時に叶えることができたのではないかと思います。対して「キナリ」は、どちらかというと明るめの「キナリ」です。住宅の壁紙に近い色を選び、環境に溶け込むことを意識しました。とてもベーシックな2色なので、多くのインテリア空間と調和するのでは、と想像しています。

── 住まいの中での収まりがとても良さそうですよね。

安積:建築造作の一部になるような、存在感としては気配を消すようなプロダクトを提供したいという想いがあります。建築空間には柱や梁があり、円筒や角柱の形が存在しますよね。「dewo ii」は前円後方形、前の方が筒で後ろの方が箱型です。建築造作の一部のように馴染むことを意識しました。給水口の設け方なども、ざっくりと円筒形をくり抜いた思い切りの良い形が、デザインの清々しさとして伝わればいいなと思います。

温度に合わせたボタンが
搭載された、“直感的な快適性”。

── 機能面のデザインでアップグレードされた点について教えてください。

安積:「dewo ii」は常温水が加わったことが大きな変化と言えます。ウォーターサーバーは温度選択をするボタンがいくつもあっても、出水するボタンはひとつに絞られているインターフェイスが実は多いんです。「dewo」や「Slat」シリーズは、温度に合わせたボタンが搭載されているタイプです。「COLD」というボタンをひとつ押せば冷たい水が出るという、操作と機能のシンプルな関係がストレスを減らし“直感的な快適性”を生むと考えています。ボタンのセレクションの数は「HOT」「NORMAL」「COLD」に加えてリヒートボタン、チャイルドロックなどがあります。お年寄りから子供まで、ボタンがたくさんあってもボタンを押し間違わない配慮をする事で、体験としてのシンプリシティを提供するデザインを意識しています。

── 「HOT」「NORMAL」「COLD」の文字の色が個別に異なるのもポイントですよね。

安積:ある程度、視認性の高さ確保しながら優しい色を出すのに結構、神経を使いました。開発の方には何度もご迷惑かけたかもしれませんが、「HOT」の赤い色や「COLD」の青い色を何度もやりとりしてやり直しました。そうしたプロセスを経たことで、目に刺激がないけれど、ちゃんと目に留まって認識できる色や文字のサイズに着地できました。細かなことですが「dewo」よりも、ボタンのサイズ自体を少しずつ小さくしています。全部がコンパクトに真ん中にキュッと収まり、シンプルに見える工夫をしています。

── ボタンひとつ一つの間隔も計算してデザインされたのでしょうか?

安積:初期型の「dewo」では、ボタンのサイズをわざと大きくしました。朝の起き抜ぬけにぼんやりした頭で押しても、絶対に間違った機能を選ばないといいますか。「どこを押せばいいんだっけ?」と、いちいち考えてからボタンを押すのは、嫌じゃないですか。そうした日常生活のシーンを想定した配慮は「dewo ii」にも引き継がれています。ただし、ボタンの数が増えたことで、ボタンを大きくし過ぎるとちょっと使いづらくなってしまうだろう、という懸念がありました。ボタンの幅をすこし詰めつつ、指が隣のボタンを押してしまわないように整えています。

ニュートラルで
上質なデザインを細部に。

── 細心の注意を払ったデザインがなされていることで、利用時の心地よさに繋がっているのですね。ほかにも、細かな点で配慮されたことを教えてください。

安積:ボタン色を樹脂色にしたことも新しいバージョンアップのひとつです。カバーの色がそのまま繋がっている感じの色合いにしています。「dewo」のボタンはシルバーでしたが、「dewo ii」は環境との馴染み方、優しいトーン、上質さを意識しました。華美な演出は避けてもう少しニュートラルな見栄えになるように配慮しています。ロゴのデザインのサイズも、控えめに軌道修正しています。「dewo」を作った当時は、ブランドを認知してもらわなければならないということで比較的大きめにサーバーの真ん中にロゴを配していました。時代が変わり、今はブランドを強調したデザインはあまり求められていないと感じています。それよりも、心地の良い生活を提供してくれるものこそ、求められていると理解しています。何かを所有して満足するというよりかは、良い体験を提供して満足できるようなプロダクトだと感じてもらうために、こうしたディテールのデザインに心を配りました。

プロダクトデザイナー 安積 伸SHIN AZUMI

兵庫県生まれ。95年よりデザインユニット「AZUMI」として活動の後、05年に「a studio」を設立。ティファール社やマジス社、ラパルマ社など多くの国際的企業でプロダクトデザインに携わる。FX国際インテリアデザイン賞2000「プロダクトオブザイヤー」(英国)をはじめ、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞(日本)など国内外での受賞多数。また審査員としても多くのデザイン賞に関わり、各地の美術館に作品が収蔵されている。

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プロダクトデザイナー 安積伸
プロダクトデザイナー 安積伸

Photo : Hitoshi Sakurai
edit & text : Seika Yajima
Photo location: Jiyu Gakuen Myonichikan