デザインについて

「もっと小さく、もっと自由に」
デザイナー 安積伸と
フレシャスの開発担当者が明かす、
FRECIOUSウォーターサーバーの新展開
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よりシンプルに、そして清潔に。
フレシャス独自の最新技術が生きる

——いつでもどこでも、好きなときに使える、軽くて小さく、持ち運びのできるウォーターサーバー。口で言うのは簡単ですが、あの据え置き型のウォーターサーバーを小型化する、持ち運びを可能にするのは、大きなチャレンジですよね。

開発担当:そうです。静音で軽くするためには、重いコンプレッサーは使えない。そしていつでも使えるようにするには、これまでの据え置き式で使っていたクリーニング方式もやめなければいけない。従来のクリーニング機能では、その動作中は2〜3時間使えなくなってしまいますから。

 ——ミニではUV-LEDによる殺菌を採用したとか。これは、業界初ですか?

開発担当:ええ、ウォーターサーバーへの採用は当社が初で、特許出願中です。UV-LED殺菌はこれまでのクリーニング方法よりも効果が高く、空気清浄機などにも採用されていますが、2年前はパーツ1つがとても高価だったものが、技術がリアルタイムでどんどん伸びていくおかげでパーツ寿命と価格が劇的に改善し、業界初の試みにチャレンジする、ちょうどいいタイミングでした。

開発担当:UV-LEDを採用したおかげで、これまでのデュオにあったフレッシュボタンがなくなり、正面パネルに並ぶボタンがよりシンプルになりました。

——フレシャスのウォーターサーバーで使われている、水パックに刺さって採水するニードルも人気ですね。

開発担当:ステンレスニードルの良さは、お客様に広く評価していただいていますね。手動でなく、ボタン操作によって一定の速度で一定角度で刺すものですが、デュオの時に初めて採用した技術です。ステンレスニ一ドルとパックの相性もありまして、ニードルが綺麗に刺さるように、パックの材質や、パック表面を伸ばしておくテンションの調整などにはかなり試行錯誤しました。

安積:ニードルの採用で、エアレスな採水が可能になっています。ボトルなどは開けた時に入る空気で雑菌が混入する可能性もありますが、水パックは清潔なのがいいんです。

家電であることをやめたウォーターサーバー

——今回のミニにおけるもう一つのテーマは「もっと小さく、もっと自由に」だったそうですね。

安積:寝室やリビングなど、キッチンにとどまらずどこでも使えて持ち運べる、コンパクトなウォーターサーバーということでなお一層、従来の家電的なイメージのないデザインを試みました。
高精度になった感じを表現すべく、どの角度から見られても端正な姿になるよう気を使いました。背面は煩雑な要素を整理して、凸凹やビスなどの必要悪は極力気配を消すように心がけました。部品を組み合わせるパーテーションライン(繋ぎ目)がいくつもあるとパッチワークのような印象となるため、一つ一つの部品の大きさや「どこで割るか」にもこだわりました。その結果、ルーバーも含めた一体感が出せたように思います。

開発担当:デザインに関しては安積さんからぜひしつこく言っていただきたいと、むしろ歓迎しているんです。その方が、開発側にも知恵が出てくるんですよ。

安積:製品の完成度を高めるためには、様々なディテールに気を配る事が大切だと思っています。シャープ、タイト、細く、小さくという凝縮感は、単純に縮めたものではなく「精度感」あふれる感じに作りたい。 

——カラーも、スカイグレーやメタリックブラックに加え、今回はカッパーブラウンが加わりました。これは、ウォーターサーバーでは見たことのない味わいのある色ですね。

安積:このカッパー色は、富山県の伝統着色による銅器をイメージソースにしています。表面を酸化させて腐食を防ぐ工芸的な技術なのですが、その鈍い赤銅色の高級感が、上質なインテリアにとてもなじみます。もちろんデュオミニは樹脂であり素材が違いますので同じ色を出すのは不可能です。インスパイアされながらも独自の風合いを出そうと、微調整を繰り返しました。
また、表面を光沢で仕上げるといかにも「キッチン家電」といった印象が強すぎてしまうため、今回の「キッチンだけでなく、リビング・寝室・和室などの自由な置き場所で使う」とのコンセプトに合わせ、キッチン以外の場所にもなじむサテンマット仕上げにしました。
光を受けたときにはギラッとした金属感も出て、とてもいい。相当微妙なバランスなので、光によってどう見えるか、何度も微調整しました。

——正面デザインも、既存のとは細かな部分で違いがありますね。

安積:これまでも、テーブルの上で普通に自然にお湯を注ぐため、高い位置での給水ポジションには注意を払ってきました。私としてはようやくこの機種で、人間工学的に自然な位置を提供できたと思います。この給水ポジションに合わせてボタンレイアウトも調整し、大きさや幅なども修正しました。

——ウォーターサーバーというよりも、どこか給湯ポットのような扱いやすささえ感じます。

安積 まさに、例えば旅館の給湯ポットの代わりに置いてもらうような場面を想像し、そういった場面にもフィットするデザインや色を追求しました。カッパー色は特に、和風建築や和室の無駄のない造作と相性がいい色・質感が実現できたのではないかと思います。

——和室にウォーターサーバー! 活用場面が広がりますね。

フレシャスが先駆けとなって、業界に新たなジャンルが誕生

安積:ロンドンを拠点とした足かけ25年のヨーロッパ生活から昨年帰国して、日本の生活に関する想像力が広がったのかもしれません。研ぎ澄まされた和室の造作を日常的に目にするようになり、削ぎ落とされたデザインの重要性を、なお意識するようになりました。

開発担当:デザイン側でも、技術側でも、点と点がいいタイミングで一致したのが今回のミニなのかもしれません。いい流れの中で、いいものができたと自負しています。 

安積:「インテリアになじむウォーターサーバー」というのはこれまで手つかずのエリアでしたから、使い勝手・技術・販売網と全面的に刷新してゆく デュオシリーズのプロジェクトは、デザイナーとしても貴重な機会だと感じています。

開発担当:デュオシリーズは、「安ければいい」ではなく買ってでも部屋に置きたいと思っていただけるようなデザイン性と性能の高い機種へ舵を切った、当社にとっても大きな転機でした。
業界的にも、「インテリアコンシャスなサーバー」という新しい1ジャンルを生みましたし、デュオのグッドデザイン賞受賞は業界の先駆けとなったんです。

安積:業界に新たなジャンルを生むようなプロジェクトに携われるのは、デザイナーとしては最高の喜びです。デザインも比較的自由にさせてもらっています。日本の大手家電メーカーが出来ないデザイン、ということも少し意識しています。核になる主題を残して出来るだけそぎ落とすデザイン。さらに、どこか高貴な印象も持たせたいと思っています。

——日本のプロダクトデザインに新しい風を持ち込む、というのは、さすが安積さんのキャリアならではですね。

安積:私は昨年までヨーロッパ在住のデザイナーとしてデザインを行ってきましたが、帰国して1年が経ち最近改めて、自分はヨーロッパの影響を強く受けた日本人デザイナーなのだという認識に変わってきました。日本に在って日本人の住環境のためにデザインをする現在の立場では、外野でなく内部からしっかりした意見を言う覚悟や責任がある。それがちゃんとデザインに出ているだろうかと、常に自問自答しています。

開発担当 僕ら技術開発の側は、安積さんの仕事がしやすいパートナーとして、及第点を取れていますかね?

安積 もちろんですよ(笑)。

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安積伸(あづみしん)
国内外で数多くのデザイン賞を受賞し、世界の複数の美術館に作品が収蔵されるなど、国際的に活躍するデザイナー。京都市立芸術大学、RCA(英国王立美術大学)大学院を経て、25年間英国ロンドンを拠点に活躍。2015年、「FRECIOUS dewo(フレシャス・デュオ)」と、安積さんが2001年にデザインを手がけた名品「エッジ・クロック」がJIDAデザインミュージアムコレクションをダブル受賞したのみならず、今回「FRECIOUS Slat(フレシャス・スラット)」が2016年度グッドデザイン賞を受賞するという栄誉に輝く。2016年4月に法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授へ就任。